アクアリウム:底面ろ過は低コスト&ハイパフォーマンス

アクアリウムではいろいろなろ過方式がありますが、その中で私が最もおすすめするのは実践もしている「底面ろ過」方式です。
私の水槽は2013年から開始して5年が経過しその間リセットは一度も必要としていません。
手間と時間とお金をかけず、安定した環境を構築できるのろ過方式は「エアリフト式底面ろ過」です。
底面フィルター


ろ過の基礎知識

ろ過と一口に言ってもいろいろあります。
例えば私たちが飲む水も幾重のろ過を行って不純物や有害物質を取り除き、蛇口まで安全に飲めるようになったものが届くようになっています。
アクアリウムでも同様に同じ水で飼育していると、魚の糞、老廃物で水が汚れてきます。
その汚れをろ過するための基礎知識から考えます。

物理ろ過と生物ろ過

物理ろ過目に見えるゴミを濾し取り、水をきれいにすることです。
魚の糞をウールマットで濾して糞を取り除くような、目に見えるゴミをきれいにすることを指します。
水中で魚のフンや枯れ水草が舞っていたら見栄えが悪いですもんね。


対して生物濾過は、物理ろ過に敷いたウールマットやハードマット、またはエーハイムメックなどの多孔質ろ材、もしくは低床に住み着いたバクテリアがアンモニアや亜硝酸塩を無害化してくれます。
 

これらのろ材をしばらく使っているとだんだんヌルヌルしてきますが、このヌルヌルにアンモニアなどの窒素類を無害化する菌共が住み着きます。
これをバイオフィルムといいます。

この生物濾過が機能して初めて魚が長期飼育できるようになるので、買ってきたばかりの水槽にすぐに魚を入れても有害性の強い物質が浄化されず蓄積してしまうので魚はすぐに死んでしまうのです。

水槽内の有害物質

水槽内で請託を飼育すると主に以下3つの有害物質が蓄積されます。
生体にとっては以下の1が一番毒性が高いものとなり、有益バクテリアによって2,3と順に無害化してくれます。
  1. アンモニア類 
  2. 亜硝酸塩 
  3. 硝酸塩

生物濾過の強者達

生物濾過を担ってくれるバクテリアには種類がいます。
それぞれ役割が違い、担当する有害物質がそれぞれ異なります。

ニトロソナモス

この細菌は糞やアミノ酸から発生したアンモニアNH3を亜硝酸NO2-に分解します。
アンモニアが一番毒性が強く、0.25mg/L未満に抑えるようにします。

ニトロバクター・ニトロスピラ

次にニトロバクターと呼ばれるやつらは、ニトロソナモスが分解して得られた亜硝酸塩NO2-を硝酸塩NO3-に分解します。
亜硝酸も毒性が強く0.3mg/L以下に抑える必要があります。
アンモニア、亜硝酸と経て、硝酸塩まで分解されると魚にもよりますが死亡個体が出る濃度としては50mg/Lと比較的高濃度になっても毒性が強くなくなることがわかります。

水槽などの限られた環境ですとこの硝酸塩が最終分解物と考えられます。
よって、水換えを行うことで硝酸塩濃度を減少させることができます。

脱窒菌

シュードモナス、ミクロコッカス、パラコッカス、アルカリゲネス、アクロモバクターとよばれる奴らは硝酸塩を窒素まで分解することで窒素体は水槽外へ放出されます。
嫌気的(酸素の少ない)土壌に住み着き、酸素の代わりに硝酸塩を消費して窒素に変えていきます。
しかし、こいつらは酸素が豊富なところでは硝酸塩を使用することがないため、脱窒作用はなかなか起こすことができません。(適度に浮泥が溜まった底面濾過が一番起きやすいとされています)
また、実験環境では別名「工業アルコール」とも言われるメタノールを炭素源として脱窒作用を起こすメチロトローフ(ハイフォミクロビウム)という奴らもいます。
自宅でメタノールを使うことは考えられないので、工業もしくは実験などでしか使えません。
ちなみにメタノールはアルコール類ではありますが飲むと失明します。

硝化バクテリアが住み着くには

水槽を立ち上げてから硝化バクテリアが住み着くようになるまでには時間がかかります。
方法としては水槽を空回ししておくと空気中から枯草菌が入り込み、それが糞や餌の食べ残しを分解します。
糞が塊だったのがバラバラに細かくなるのはこの枯草菌類のおかげです。
そして分解後にはアンモニア類が発生します。
他に、水草の根や魚(スターティングフィッシュ)も同様に枯草菌類やニトロバクターらがくっついてきて水質を安定化させる働きを持ちます。

硝化バクテリアを安定させる

硝化バクテリアの活性(元気に活動)が一番高いpHはアルカリ性よりなんです。
ですので、水草のために酸性値のpH5.5にすると亜硝酸を分解するニトロソナモスも50%程度の活性値となり、比較的活動範囲の広いニトロバクターの活性値も下がります。
また、硝化作用を起こす際には窒素体以外にも硫黄(S)、リン(P)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)などの元素を大量に必要とします。

アンモニア類を分解するには

アクアフォレスト豆知識シリーズ:https://mizusyoli.com/dattitu/entry43.html
硝化細菌にだけ頼ってアンモニア類を無害化するには限度があります。
そこで必要になるのは結局「水換え」になるわけです。
もちろん単に硝酸塩濃度を下げるだけでないメリットもあります。

水換えで得られるメリット

古水による病原菌繁殖の防止

水が古くなるとエロモナス細菌類も繁殖して魚が病気にかかりやすくなります。
また、夏場の水換え時には温まった水を流して、少し冷たくなった水を汲むようにしましょう。

なお、カルキ抜きについては私は実施すべきだと考えていまs。
カルキ抜きの必要性に関しては以下の記事を参考になさってください。
関連記事:アクアリウム:水道水のカルキ抜きは本当に必要か

カルシウムイオン、マグネシウムイオンの供給

日本の水道のお水も美味しいですよね。それは硬度物質が微量に含まれているからなんです。
水換えすることで水槽内で消費されたカルシウムやマグネシウムイオンが新たに供給され、硝化細菌類も安定して活動を続けられるわけです。
水換えなんてしなくてもいいってのは流石に幻想だと思いました。

底面フィルター選び

さて、次は底面フィルター選びです。
どれを選んでも大差はないのですが、選ぶとすれば次の点を備えたものだと思います。

  • 長く形を買えていないもの=シンプルで頑丈な作りのもの
  • どこでも買えるもの=販売数が多くユーザーが多い
  • 適度に安いもの=安定供給が図られている価格帯となっている

おすすめ底面フィルター

ニッソーバイオフィルター・GEX マルチベースフィルター(おすすめ度:★★★★★)

どちらも作りが単純で丈夫にできていることがポイントです。
形も殆ど変わっていないと思いますが、改良改善がなされた完成品と考えてもらって良いです。
  

水作 ボトムフィルター(おすすめ度:★★★☆☆)

写真でも見て分かる通りスカスカしていて重みに耐えきれず潰れるなんて話があります。
これもシンプルな作りを逸してしまった結果の商品と思えます。

コトブキボトムボックス(おすすめ度:★★☆☆☆)

この商品の特徴はすのこが板でなくボックス式になっている点です。
箱であるので砂利が下から侵入しにくいというところが売りのようで、さらにプラストーンを必要としないことから消耗品が不要とのことです。
しかし、このウリが災いしてヘドロで詰まりやすいという弱点が生まれ、プラストーンが必要としないエアレーション部分が詰まると、他の部分からボコボコ泡が出るようになってしまうなど、本末転倒の結果を生むケースがあります。


値段も安いほうが長持ちして壊れにくいなんて、なんて素敵な響きなんでしょうね。

底面ろ過の低床選び

さて、底面ろ過には適した底床を選択することが最も大事だと考えられます。
では適した底床にはどんなものかあるでしょうか。

大磯砂

大磯砂はどんなショップでも簡単に入手可能です。
また、サンゴや貝殻が入っている場合が多く硬度が高くなってしまう効果があります。

この低床では水草が生い茂る水槽を作るには熟練が必要ですが、生体を安定飼育するために必要な硝化細菌はアルカリ性で硬度がある方が活発化してくれます。

大磯の目の細かさ

大磯砂を底床ろ材とするのであれば、細目もしくはもっと小さなものがよいです。
通水性が悪くなるからおれは荒い大磯を選ぶ!という意見もありますが通水性=ろ過能力にはならずバイオコロニーが大きな目の大磯砂では形成しにくいというデメリットがでてきます。
よって、大磯砂は入手しやすい細目もしくはプレミアムサンドを選択するのがよいです。

富士砂(マスターサンド)

溶岩砂で多孔質でありソイルのように簡単に崩れたりしませんが、若干尖っていることがあります。

大磯砂と比べると空気を含んでいるため砂利自体が軽く水草が植えにくいです。
園芸用品の富士砂には雲母が混じっている場合があります。
雲母は水質を弱酸性に傾ける力があるそうですので、pHが5から6など低い状態で推移してしまうことを考えると硝化細菌の活動能力が落ち、結果として濾過能力を落としてしまう可能性があります。

水槽用のマスターサンドであれば雲母は除かれ粒径も揃っています。
しかし、園芸用品は2Lで2~300円ととても低コストです。

吸着系ソイル

低床に吸着系ソイルを選択する方法もあります。
吸着系ソイルのイオン交換機能を十分に発揮させることができます。(短時間でソイルのイオン交換機能が失われるという欠点も考えられますが)

しかし、ソイルの粒が細かすぎるとフィルターのすのこを通してしまうことがあり、そのために洗濯用ネットを敷くなどという方法が定説化していますが、私は大きく反対します。

理由は、洗濯ネットの目の細かい網にバイオフィルムが形成されるとすぐに通水性が失われてしまうからで、こうなるとリセット作業が必須になります。

ソイルに限らずネットを敷くのは長期安定底面ろ過のコンセプトから外れてしまいますので、推奨しかねる方法であります。

田砂

田砂は目が細かすぎて底面フィルターには選択できません。

セラミック系底床

底面濾過としては多孔質でもあることを考えると良い選択肢であると言えますが、セラミック系の砂はとても軽く底床掃除に舞い上がりやすいため、水流をうまく調整しないと吸い込んで詰まってしまうことがデメリットになります。
これは富士砂と一緒で水草を植える時にも重りがついてないと浮き上がってしまうというデメリットもあります。

おすすめの底床はやはり大磯砂

これだけの記載を考えるとやはり大磯砂のコストパフォーマンスは非常に高いと考えられます。
私の水槽では大磯細目の底面ろ過で、80匹ほどカラシンがいますが苔も生えず水草のニューパールグラスがゆっくりと成長しています。

底面ろ過の掃除

底面濾過ではエバグリ式の解説を読むと、ほとんど水を替えず(およそ半年ぐらい)脱窒により硝酸塩を窒素に分解しているとか。
エバーグリーンの提唱する底面ろ過の基本は、未処理大磯を使って高硬度アルカリ性に傾けることで硝化細菌の活性を上げ、かつエアレーションと水流を全体に行き渡らせることによってガス交換されることによる溶存酸素濃度を上げることにより濾過効率を上げるようです。

アルカリ性飼育のメリット

一部文書を抜粋。
代表的な硝化細菌は硝化に要求する無機物として、アンモニア、亜硝酸塩、CO2-、-H2O、酸素以外にも硫黄やリン、カリウムの他、硬度物質であるマグネシウム、カルシウム、ナトリウムなどの元素を含む様々な物質を必要とする。また、CO2を必要とすることから、炭酸水素ナトリウム(重曹)の添加が硝化を促進するとも言われる(多少の塩が入るが濃度的には問題ない)。代表的な硝化細菌はpH8以上で硝化反応を効率的に進めるが、これらの細菌類はpH6以下では硝化を進めない。
低硬度の弱酸性環境下では硝化菌類の活性が落ちるとされています。
水草水槽が低硬度、弱酸性を推奨していたとしてもそれは魚が少なく水草に窒素体を吸収させているから成り立つのであって、生体を多めにした場合にはアルカリ性飼育のほうが良いと考えられます。

アルカリ飼育の欠点

アルカリ性の水質ではコケが生えやすいとされています。
その理由は二酸化炭素が水草が吸収しにくい形でとどまるせいでもあります。
そして、水草が吸収しにくいうえにコケは吸収しやすいという状態でもあります。

アルカリ性に傾いているということは硬度もそれなりに高いはずなので、硬度物質が多いとことさら水草が育ちにくいということになります。

あのマツモですら、アルカリ高硬度水では育つことすらできずコケに敗れてしまいます。
ただ、硬度の原因となるカルシウムイオンやマグネシウムイオンがまったくないとそれはそれで水草が育たないわけですので、この辺の微調整がとっても難しく、水槽ごとに環境は違いますので経験でなんとかしていくしかないということになります。

水換え頻度が少ないと

水換え時にはカルシウムやマグネシウムなどの微量元素も供給されます。
生体が多く餌もたくさんやっている場合には、窒素も充満しますし、リンが蓄積していってしまいます。
この場合は、上澄みだけでも良いのでやはり週一ぐらいで水換えを行ったほうが富栄養化を防ぎ、コケの蔓延も防いでかつ生体にも良いです。

底床掃除を推奨する理由

低床掃除は行うべきでないなどの記事が挙げられますが、全く行わないとそれは底面ろ過の機能が失われると考えて良いと思います。
先ず底面ろ過で浮泥が蓄積してくると、詰まりが起きます。
詰まりが起きたとしても他の部分から地層へ吸い込まれるのですぐにどうこうすべきではありませんが、しばらくほっておくと水流のない箇所ができてしまいます。
こうなると硫化水素であったり腐敗菌、カラムナリス、エロモナス症を引き起こす原因となってしまいます。

底床掃除はどのくらいの頻度で行うべきか

高頻度に低床掃除をすると、浮泥が硝化菌のコロニーとなることもありますので、逆にろ過能力が下がる場合があります。

吸い出す方法は半年に一度は底床も掃除しないと浮泥で詰まり気味になってしまいます。
それにリン酸も蓄積してくると黒ひげゴケに覆われてしまいますしね。
ただ、嫌気域でないと根がはりにくいなんていう話もあるんですけどね

①詰まりを分散させるためにピンセットで耕す。

そして、浮泥を吸い出さずにピンセットで底床をかき混ぜ嫌気域を作りにくくする方法もあります
上澄み水換え前に低床をかき混ぜて通水性を維持するとよいでしょう。

たとえ泥が舞い上がったとしても魚が健康なら問題ありませんし、浮泥には栄養細菌が繁殖し、エビが食べてくれます。

②プロホースで底面掃除

プロホースを使った場合、上述のコロニーを崩してしまうので毎回低床掃除はやるべきではないです。
なので、生体の量に応じて上澄みの掃除、たまに低床の掃除をやるべきです。
夏場は1~3ヶ月に一度、冬場は3~6ヶ月に一度ぐらいはザクザク低床掃除をしましょうね。

③お掃除スポイトで泥を吹き飛ばす

ピンセットの代わりにお掃除スポイトを使って浮泥を吹き飛ばしてもいいです。
一箇所に溜まった浮泥を分散させる効果があります。
また、水を吸い込んだあとに低床奥深くに差し込み、強い水流を流すことで低床のフィルター奥に溜まった浮泥を拡散させることも、止水域を減らす方法としてはよいでしょう。


④思いっきり息を吹き込む

底面ろ過のエアチューブに思いっきり息を吹き込むか、自転車空気入れで空気を流入させると、底面フィルター内に溜まった汚泥を外に排出して通水性をアップさせることができます。
これも2ヶ月に一度くらいはやっても良いでしょう。

底面ろ過で水草を育てる


底面フィルターでは水草育つ、育たない、育てるべきじゃないなどと意見が多種多様です。
私としてはせっかくの水槽であれば緑もあったほうがきれいだと思いますのでぜひとも水草を育ててほしいと思います。

水草を育てないほうがいいという理由

これは底面ろ過が水草が育たないという理由でなく、水草がよく育ってしまうと根がフィルターにまで絡んでしまうことと掃除がしにくくなってしまうことです。

水草の育成と失敗談

未処理の大磯に博多の塩を打ち込んで飼育を始めた頃、水が出来上がってきてからはパールグラスは隆盛し、ウィローモスは四方に広がり、アメリカンスプライトは白化するほど成長しました。

そして明くる日、底面フィルターの煙突が斜めなのがどうしても気になって
ちょっと引っ張ってみることにしたんです…

そしたら
スポン…

底面フィルターと煙突がつながっていなかったんです。

それを苦労してリセットせずに再接続してからというもの、全く水草が育たず、育つのはマツモだけ。

吐出パイプ調整後の成長具合

根を張るタイプの水草が全く、全く育ちません。
葉から養分を吸収するであろうアヌビアス・ナナも矮小化を続け、ナナプチ程度の大きさになり苔に覆われ…

水草が育たなくなる理由の考察

GHが低くなった

大磯に含まれる貝殻が溶け出し、GHが低くなったことが原因であろうということ、GHが低くなってカリウム余計になっているかもしれないということ。

低床の水流が強すぎる

吐出パイプを正しく設置したことで、低床に強い水流が流れるようになり根がはれなくなってしまって成長できないのではないかとも考えられます。
しかし、好気条件になることで根張りがよくなるという話もあるのでこれだけでは説明がつきません。

GH低下とカリウム添加の複合技

GH低下することでカリウム要求量が下がっている可能性も考えられます。
ブライティK添加による水草萎縮の記録をつけているブログも有りました。
参考記事:[水槽の悩み] カリウム過剰添加症状
私の水槽ではカリウム溶液を直接添加しているわけではありませんが、ホームセンターで買える塩素中和剤がどうもビタミン&カリウムっぽい溶液であります。
水換えのたびに強いアルカリ分が入ってきてしまうため、pH上昇に加えてカリウム過多となり、もしかしたらマグネシウムやカルシウムとの吸収阻害を起こしている可能性が考えられます。



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